第3回
第一章 徐福伝説
(3)ある小国
紀元三世紀、日本はまだ統一国家も無く、各地に国が散在していた。
しかし、統一へ向けての動きがあり、中国の魏へ使いを出す国も出て
きた。
山梨県、富士山の裾野に、ある小国が栄えていた。そこは、他国と
隔絶した独自の文化を築いており、国王は「不老不死」の仙薬を作り、
長生きをしているという噂が近隣に伝わっていたが、誰も確かめた者
はいなかった。
国王の居間、年老いた国王が横たわっていた。
「父上、気を確かにして……」
一人の若者が、励ましていた。
「王子よ…、いよいよ、お別れの時が来たようだ…」
国王は、弱々しく囁いた。
「何を弱気なことを!」
再度、若者はやせ衰えた父親の手を握り励ました。
「いや、自分の体だ…。もう気力・体力が尽きるのが分る…」
国王は手に残り少ない力を注ぎ、息子の手を握り締めた。
「父上、これをお飲み下さい」
王子は『不老不死の仙薬』と言われる薬を、父親に飲ませようとした。
しかし、国王は頭を振り、眼を閉じた。そして、静かに息を引き取った。
長根 忠人(ながね ただと)
医学博士。旭川市内でサクラ咲くクリニックを開業。09年に上梓した医療SFアクション小説『イプシスの刃』(文芸社)
が好評発売中。
サクラ咲く ブログ(http://sakurasaku-c.sblo.jp)
【続きは本誌で】