第5回
第一章 徐福伝説
(5)霊薬
「私達は『不老不死の霊薬』を求めて来ました。私に貴方達の、行く末についてお話出来るか…」
「…『不老不死の霊薬』はありません。先祖達も、追い求めていましたが、駄目でした」
格文はすまなそうに答えた。徐福は、
「今までの苦労が……」
と絶句してしまった。それを見て、美姫は優しく微笑み、
「徐福様、大丈夫ですか?」
その声は、小鳥のさえずりの様に美しく、軽やかに徐福の心に沁みた。徐福は我に帰り、
「はい…大丈夫です」
と顔を赤らめて答えた。
「まあ、良かった。お父様はまだ『霊薬』の全てを語ってはいません。お父様お話を」
美姫は手を打って喜び、格文に先を話すように促した。格文は、二人の様子を見ながら話し始めた。
「徐福殿、先祖達は諦めませんでした。不老不死とは行きませんが、寿命を伸ばす薬『寿命延伸丹』という薬を作りました」
「『寿命延伸丹』…とは?」
徐福は眼を輝かせて聞き返した。
「はい。先祖達はこの地で研究し、ある程度まで寿命を延ばせるまでの薬を作りました」
「ほう」
「しかし、それには色々な材料が必要で、造れる量も少ないのです。そのため、極一部の者にしか与える事が出来ません」
「……」
「我々王侯の代々にしか服用が許されないのですが……」
格文は口をつぐんでしまった。しばらくの沈黙の後、
「…それで?」
沈黙に耐えられずに徐福が先を促した。格文はゴホン!と咳払いをし、意を決したように話を再開した。
長根 忠人(ながね ただと)
医学博士。旭川市内でサクラ咲くクリニックを開業。09年に上梓した医療SFアクション小説『イプシスの刃』(文芸社)が好評発売中。
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