第17回 長根忠人
第三章 アンチエージング
(7)女性の時代
大和製薬主任の遠山健史は、暗い通路を逃げながら、何が
起きているのかを考えていた。
「国家反逆罪?」
身に覚えの無い事に頭が混乱していた。それでも、警察の逮
捕から救ってくれた、謎の集団に遅れまいと必死に付いて行っ
た。息を切らしながら数十分走って行くと、暗い通路が途切れ
た先に黒いバンが止まっていた。遠山達が飛び乗った瞬間、
バンは猛スピードで走り出した。
「はあ、はあ、はあ、君達は?」
「……」
「何が起きているんだ?」
再度の遠山の質問にも謎の集団は沈黙を続けていた。
「…まあ、良いさ…」
遠山は不思議と気が落ち着いていた。自分の人生の中で考え
られない事が起こっているのに、不安や恐怖を全く感じていな
かった。
「人間、突拍子も無い事が起こると、腹が据わるのかな?」
そんな事を考えているうちに、黒いバンはとある空き工場の中
に静かに入り、エンジンを停止した。
静かにドアが開き、無言でバンを降りる謎の集団に続いて遠
山も降りた。そして、奥にある薄明かりの漏れている部屋に向
かって歩き出した。
【続きは本誌で】
長根 忠人(ながね ただと)
医学博士。
旭川市内でサクラ咲くクリニックを開業。
09年に上梓した医療SFアクション小説『イプシスの刃』(文芸社)が好評発売中。
サクラ咲く ブログ( http://sakurasaku-c.sblo.jp)
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点検・軽微な補修を行なうロープワーク。